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ゆきわり草7・8月号

2024年6月28日(金)

 今年の夏も猛暑が続くようです。暑い夏の盛りを英語ではDog day’s of summerと表現します。暑さを表現するのになぜdog=犬なの?と思いますが、これは星座の「おおいぬ座」を構成するシリウスという星が、日の出の直前に空に現れる時期がとても暑くなることに由来しているそうです。

 シリウスは、おおいぬ座の中ではちょうど犬の鼻先にあたる位置で輝いていて、地球からは8.6光年の距離。光度は1.4等級で、天空では太陽系以外の天体として最も明るく見える星です。シリウスには少し悲しい伝説があります。ギリシャ神のデュオニソスは、旅の途中で親切にされたイカリオスにまだ人間が知らなかったワインの醸造方法を教えます。出来上がったワインの美味しさに感激したイカリオスは、ワインを人々に広めようと次々に近所の農民たちにワインを振る舞っていきます。

 最初はワインの味を喜んでいた農民たちですが、彼らは当時まだ「酒に酔う」という現象をしらなかったため、酔いが回るにつれて、もしかしたら毒をもられたのかもしれないと誤解し、イカリオスを殺してしまいます。その様子を見ていた飼い犬のメーラは、イカリオスの服の切れ端を咥えて娘のエリゴーネのもとに走ります。メーラに埋葬場所に案内されたエリゴーネは、優しかった父が突然、殺されたことを知り悲しみのあまり自ら命を絶ってしまいます。メーラはその日以降、父娘のお墓の前にじっと座ったまま何も食べず、眠りもせず、ついには死んでしまいました。

 この悲劇を知ったディオニソスは、イカリオスを「うしかい座」に、エリゴーネを「おとめ座に」そしてメーラをシリウスとして「おおいぬ座」にあげて、その魂を弔ったとされています。おおいぬ座は、ちょうど犬が「お座り」をしているような形に星が並んでいます。お墓の前に座り続けたメーラを表しているのですね。

 シリウスは夏は昼間に現れるので、日の出直前にしか見られませんが、「うしかい座」と「おとめ座」は夜空の西方向に並んで見えます。夏の夜空を眺めて、仲良し父娘のことを思ってあげてください。
                                       

                                                                                       園長 永井 洋一

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