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ゆきわり草12月号

2023年12月6日(水)

 ヴィヴァルディの四季では「春」が一番、親しまれているかもしれません。私はもちろん「春」も好きですが「冬」の第2楽章も気に入っています。冬といえば暗く冷たいイメージになりがちですが、この第2楽章は何だか温かい部屋から雪景色を眺めているような、ほのぼのとした気持ちにしてくれるのです。
 今回、調べて初めて知ったのですが、四季の各楽章にはソネットと呼ばれる定型詩が付されています。「冬」の第2楽章には「暖炉の前で過ごす安らかな日々。外は雨が降っている」という詞がついていました。暖炉の前というイメージは私の想像通りでしたが、降っているのは雪ではなく雨だったのですね。

 冬の雨と言えば、松任谷由実さんが(荒井由実時代)「12月の雨」の中で「ストーブをつけたら曇ったガラス窓、手の平でこすると、ぼんやり冬景色」と歌っています。こちらも暖かい部屋から寒い外を眺める場面が描かれています。何百年もの時を経ても、温かい部屋と寒い外との対比を窓を挟んで観察することが才能豊かなアーティストの感性を刺激することは変わりないようです。

 さて、京都にある曹洞宗の寺院、源光庵は「迷いの窓」「悟りの窓」で知られています。「迷いの窓」は四角形でその四隅は人間の宿命である生老病死、愛別離苦などを表しているそうです。「悟りの窓」は円形。万物の真理と永遠の時間を象徴しているといいます。四季折々の美しい景色を違う形の窓から見ることで、万物流転の真理を感じることができるのかもしれません。

 夕暮れが一年中で最も早くやってくるこの頃、夕方に明かりを灯せばそれまで見えていた外の景色はフェードアウトし、窓には自分の姿が映ります。同じ方向を見ているのにスイッチ一つで外と中が切り替わってしまいます。源氏庵のように形の違う窓から同じ景色を眺めて内省するのも趣がありますが、点灯とともに沈んだ背景に浮かぶ窓の中の自分の姿を見て何かを感じ取るのもいいかもしれません。            
                                                                                                                      園長 永井 洋一

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