令和6年は辰年です。龍、ドラゴンは、西欧社会では人間に不幸をもたらすものの象徴ですが、東アジアでは守護神的な扱いをされることが多く、中国ではあらゆるものに勝る最上級の存在です。
神奈川県にも龍にまつわる伝説があります。昔々、江ノ島の対岸の鎌倉、深沢の池に5つの頭を持つ五頭龍が棲み、その龍が暴れると嵐が巻き起こり、津波や洪水で人々が苦しい思いをしていたそうです。祈祷師は龍を鎮めるためには幼子の生贄を捧げねばならないと言いますが、そんな事はできないと誰もが途方に暮れていた時、天地を引き裂くような響きとともに海中から江ノ島が盛り上がり、そこに美しい天女が舞い降りました。
その美しさに見せられた五頭龍は夫婦になるよう迫りますが、天女は五頭龍の過去の悪行を指摘し悔い改めるよう迫ります。五頭龍は改心して、以降、人々守るために生きることを誓い、天女と夫婦になります。その後、長らく地域の守護神として貢献した五頭龍は神通力を使い果たし、天女が住む江ノ島の対岸で力尽き山となりました。
五頭龍が身を横たえた際、口があった場所が「龍口」とされ、現在でも江ノ島の対岸に瀧口寺が建っています。五頭龍を祀る社は、龍が身を横たえた胴体の場所に当たる腰越という場所で「瀧口明神社」として江ノ島一体を見守っています。「腰越」という地名は、五頭龍が改心したお陰で幼子の人身御供を差し出す必要がなくなったことから「子の死を超えた」という語呂で「こしごえ」となったとも言われています。
「龍は一寸にして昇天の気あり」と言います。わずか一寸(約3cm)の幼い龍でも、すでに天に登ることを考えているということわざです。銀嶺の子どもたちも龍のように小さな体に大きな夢を抱いてほしいものです。
園長 永井 洋一