12月の最終日は大晦日です。「晦日」はもともと最後の日という意味で、12月31日は「最後の最後」ということで大晦日となりました。さて、なぜ「晦日」が最後の日を意味するのでしょう。「晦」という字は、「つごもり」とも読みます。「つごもり」は「月ごもり」の変化形で、月がない状態すなわち新月を示します。陰暦では新月→満月→新月のワンサイクルを一ヶ月としていました。そのため、陰暦では満月が欠けていき新月になればそれが月末で、月ごもりの日、つまり「晦日」としたのです。
古来、月の満ち欠けは私たちの生活に影響を与えると信じられてきました。出産や交通事故や凶悪事件は満月の日に多いとか、新月の日は体調が悪くなりがち、などなど。いずれも実際に統計をとってみると、あまり科学的な裏付けとなるような結果は得られていませんでした。ところが2020年、トヨタ織機と岐阜大学の共同研究チームが、月が持つ不思議な効果を科学的に証明してみせました。その効果とは、なんと「スッポンの発育を促進する効果」です。
月の引力と天体間の遠心力などによって生じる「起潮力」が潮の満ち引きを起こしていることはよく知られています。その起潮力がスッポンの発育に与える影響が調べられました。満潮のタイミングを選んでエサを与えたスッポンと、毎日午前10時に定期的にエサを与えていたスッポンを、それぞれ25匹ずつ14週間飼育すると、満潮時を選んでエサを与えたスッポンの方が1.6倍大きく成長したというのです。これは、ばかばかしくナンセンスな研究に与えられるイグノーベル賞狙いではなく、大真面目な産学共同の研究です。起潮力を利用した餌やりで生育時間の短縮ができれば、生産性が向上しSDG’Sに貢献するという目的のもとで行われています。
「月とスッポン」という表現は格差の象徴として使われています。同じ丸い形をしていても、天上に美しく光り輝く月と水の底で泥にまみれたスッポンではまったく違うというわけです。しかし、まさか月がスッポンの成長を後押しすることが科学的に証明されるとは誰も思わなかったですね。私たち人間も近い将来、満潮の時を狙って食事をすれば栄養の消化吸収が良い、などということになるのでしょうか?
園長 永井 洋一