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ゆきわり草11月号

2024年11月1日(金)

 聖書でおなじみアダムとイブの息子たちカインとアベルの兄弟の物語は、神の評価を受けられなかった兄カインの嫉妬による弟アベルの殺害という悲劇的な展開になります。罪を犯したカインは神の問いかけに真摯に応えようとせず、エデンの東に追放されます。カインは神から与えられていた幸福に気づかず、一時の感情で取り返しのつかないことをしてしまった自己抑制の効かない人物という形で描かれています。

 グリム童話「三匹の子豚」では、長男、次男は思慮足らずで失敗ばかりする一方で、末の弟は機転の効いた賢い振る舞いで狼を撃退するヒーローとして描かれています。鎌倉殿・頼朝と弟・義経の関係でも、義経の方に好意的な表現があることがほとんどです。人気映画シリーズ「男はつらいよ」の寅さんも、気の利く優しい妹を翻弄する困った兄として描かれています。物語の中ではどうやら「兄」の方が分が悪いことが多いようです。

 さて、そうした物語のストーリーとは違って、現実には第一子の方が第二子よりも成長の後、社会的な成功をする機会が多い、という研究結果がいくつか示されています。学歴、就職、収入など人生で重要な意味を持つ要素が、兄弟の順が下がっていくほどにレベルが低くなる傾向があるというのです。

 なぜそうなるのかの決定的な原因はわかっていませんが、仮説の一つとして親の時間投資の差が挙げられています。アメリカの研究で親と子がどれくらい時間を共有したかを比べると、第一子の方が第二子より一日20~25分長く親との時間を共有していることがわかりました。4歳から13歳までのスパンで見ると3000時間近くの差になっているそうです。

 別のアメリカの研究では、親の躾が第一子に対して手厚くなりがちという部分に注目しています。第二子、第三子と下の子が増えていくたびに、第一子が長子らしく振る舞っているかを親が確認する機会が多くなることで、第一子に自己抑制、忍耐などの非認知的能力が醸成される機会が多くなるという推測です。スウェーデンの研究でも同様に下の子の面倒を見ることによる長子の非認知的能力の醸成という点が注目されていて、第一子は、第三子に比べて45歳の時点で企業の社長になる確率が28%高いという結果も示されています。
 
 私は長男ですが、第一子であることの恩恵…そんなものあるかな~?という感じです。
  
                                                                                       園長  永井 洋一

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