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ゆきわり草2月号

2025年1月31日(金)

 古代中国・唐の時代に書かれた物語の中に「邯鄲の枕(かんたんのまくら)」という作品があります。若者、盧生が邯鄲という街で呂翁という人に出会い、自分の境遇の不運を語ると、呂翁は夢が叶うという枕をくれます。盧生がそれに頭を乗せてみると、あっという間に周囲の状況が変わっていき、出世、冤罪による投獄、処罰を免れての復職など、ドラマチックな人生を次々に経験していきます。妻、子、孫にも恵まれ、波乱万丈ではありますが最終的には幸福な人生を送ることになり、多くの人々に惜しまれながら死を迎えようとします。そこで盧生は目が覚め、全ては一瞬の夢であったと悟ります。呂翁が火にかけていたお粥が煮上がる前の短い時間の出来事でした。

 映画「コンタクト」ではジョディ・フォスター演じる女性科学者エリーが、宇宙の彼方から送られてきた信号を解読した設計図で作った宇宙船で、信号の発信元を探索にでかけます。時空を旅した末に到着した天体でエリーは亡き父と涙の再会をしますが、それが父ではなくエリーの脳内を再現したものと気づきます。父の姿を借りた知的生命体は「今、君たちに教えられるのはここまでだ」と言い、去っていきます。エリーは再び時空を旅して地球に戻りますが、帰還すると基地は大騒動になっています。エリーの宇宙船は発進直後に海に落下したのだと。エリーが自分の体験したことをいくら力説しても誰も信じてはくれません。 膨大な予算の無駄遣いをしたプロジェクトだったとエリーはバッシングされます。しかし、宇宙船内を点検した職員が操縦室のタイムカウンター見た時、エリーが報告した通りの時間が経過していることを発見します。

 いずれも一瞬の中に長い時間が流れているという不思議を描いています。すでに2025年が明けてから一ヶ月。人類全てに三十日余の日々の積み重ねがあるはずですが、振り返ってみれば一瞬のよう。あっという間に12分の1が終わりました。光陰矢の如し。  
 
                                                                                    園長  永井 洋一

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