令和元年10月28日(月) 園長 尾﨑 春人
今月(10月)の初旬、本園の運動会、称して“RUGBY WORLD CUP FOR CHILDREN”つまりラグビーの世界杯の影響をいっぱいに受ける運動の日、その成果が報告されました。大人の参加者が書いて下さった感想文付きでした。投稿された方々、編集担当の教諭方に興味津々の記録を添えていただきありがとうございました。
市内の市立小の運動会を見学した幼稚園教諭から伺った小さな報告も、いろいろ考えさせられる点で興味深いもので面白く伺いました。
1年生の徒競走の番組名に、≪まっすぐはしろう≫と付記されているのに気付き、半ばおどろいたという感想も寄せられましたので紹介しましょう。
幼稚園も小学校も入園、入学初めての徒競走(かけっこ)の指導に苦労するのは当然過ぎる程当然の通過点でしょう。先ず着順を競うことの意味(=幼稚園3才児の場合はおもしろさ)を理解(=経験)すること。次に「ヨーイ、ドン」のドンを聞いたら走り始め、一定の距離を走って、見えない先にあるゴールに達しなさい、もう一つの約束は両際の白い線の間をマッスグに力一杯走ることです。という、大きな目的ひとつと、4つの約束と同時に自分の体内に命じながら運動しなくてはならないのが、人生初めての「カケッコ」という運動会の種目だろうと思うのです。
困ったことに幼稚園の3才児の場合、最初の約束の「ヨーイ」の準備が脳からも内臓へも起動できません。次の「ドン」という合図に注意を集中させることも未発達で、中には「ドンがこわい」と言い出す始末です。
上記の諸準備と約束を夏の始め頃から、年中児や年長児の競走ぶりを身近に観察させることからスタートさせて、カケッコをたのしむ入口辺りまで誘い込むのは、専門の幼児体育の先生でも9月の末頃まで苦労させられるそうです。
ヨーイ、ドン
ハードルも踏み切れる5才児
3才児の未発達現象の中でも「ヨーイ、ドン」に注意を払わせようとすると、誰でも最低二つの感情を通過しないと「ドン」の音に集中できません。その一つは「ドン」が聴覚を刺激した後のどうするかの事前の原因と予測です。人間の生理の機能は、それらを感情の一部ととらえ、実は競走を好きに成る前に、他人と自分との同一性や走り出す前に、視覚でとらえた網膜像から脳が想像した外界、つまり、目前のコースや応援する人々が押し掛けている空間に、何を予想して走ろうとするのか決心ができない状態では体が走り始めることを拒否しても仕方ないのです。
ましてや、未だ二足歩行の習慣も片足踏切の能力も未発達の3才児にとっては、“まっすぐはしろう”は二重苦にも等しい課題に感じるのです。
私達の網膜と脳が造り出す外界の幅(視角)は常に180度に近く、その中の一点に注意を合わせるのは楽ではありません。特に3才児時代には相当な訓練と努力を要する機能なのです。その点ペットの犬達は今日でも視界は人間の1/2程だと聞いたこともあり、我家の北海道犬で雪原を300米程走らせて見事に足跡が一直線を描いたのを覚えています。外界の一点に焦点を合わせ易い視覚の持主であることを知りました。
要は3才児でも系統的で無理のない指導を受ければ、「ヨーイ、ドン」の合図で、真っすぐ走り始め、見えないゴール地点まで大体走り切ります。結果として他児と競い合う運動の初体験に満足感を覚える様な子どもたちの生活体験と原風景に慣れている、就学前教育担当者の一人として、小学校で知覚した“まっすぐはしろう”は、共感と違和感が交差した複雑な想いに誘われたのでしょう。