2022.6 園長 永井 洋一
英語で6月を表すJuneはローマ神話ジュピターの妻、ジュノーが由来とのことです。夫ジュピターは木星の英語名で雨、風など気象の守護神とされています。ローマ神話にはジュピターの他、太陽系惑星の呼び名の由来になった神々が居並びます。マーキュリー(商人、旅人の守護神)、ビーナス(美と恋の女神)、マース(戦いと農耕の守護神)、サターン(農耕と時の守護神)、ウラヌス(天空の守護神)、ネプチューン(海の守護神)などなど。
日本では太陽系惑星には水、金、地、火、木、土、天、海という呼び名がつけられています。これは、この世界を形成する基本的な構成要素、すなわち水、金属、大地、火、樹木、土、天空、海洋を当てはめているとのことです。西欧では惑星に神々の名前を当てはめる一方で、日本では身の回りの森羅万象を当てはめるという違いは興味深いですね。これは、唯一絶対神を崇める西欧の精神世界と、八百万の神すなわち万物に神性が宿るとする日本の精神世界の違いを象徴するものの一つかもしれません。
さて、6月にゆかりある神ジュノーは結婚、出産、子どもの守護神で、女性の象徴ともいわれています。欧米でジューンブライドが幸福になるという言い伝えがあるのは、ジュノーの加護があると信じられているからです。一方、6月の和名・水無月は、旧暦では7月も含めた時期を示していて、水が多い頃(梅雨)を示すとする解釈(無は「な」の当て字で、水な月、すなわち水の月という意)と、酷暑の日照りで水が乏しくなる頃(水無し)という正反対の解釈があるとのことです。梅雨にせよ、日照りにせよ、日本の6月は欧米のそれとは違い少しネガティブなイメージがあります。
それでも正岡子規は「六月を綺麗な風の吹くことよ」と詠っています。湿潤な季節だからこそ、吹き抜ける風にも艶があり、緑が美しく映えて見えると感じ取っているのです。年中乾燥している地域では味わえない趣が日本にはあるということです。